最近になって、在留資格「特定技能」の制度を利用して外国人の受け入れをしている、または検討している企業が増えています。

理由のひとつにコロナウイルスの影響で技能実習生の入国日見込みが立っていないことが挙げられます。その理由も後押しして、技能実習を修了した国内に既にいる外国人人材を特定技能として獲得を目指す動きが活発となっています。

今回は、現在注目を浴びている特定技能について受け入れ企業が絶対に知っておかなければならない受け入れに必須の「支援業務」について、その「登録支援機関へ全ての支援業務の委託」か「自社で行う」場合のメリット・デメリットも交えながら説明して行きます。

特定技能受け入れに必須の「支援業務」とは?

特定技能を受け入れる為にはさまざまな申請書類を作成して入国管理局へ提出する必要がありますが、申請書類の中でも一番の重要な書類といっても過言では無いのが「1号特定技能外国人支援計画書」です。その書類の中で特定技能に対して行うことが義務となっている支援業務が説明されており、それぞれの実施日・実施予定日まで記載する必要があります。

支援業務の内容について

1号特定技能外国人支援計画書で挙げられている必須の支援業務10つを紹介して行きます。

事前ガイダンス

特定技能と企業の間で雇用契約締結後、在留資格認定証明書交付申請前又は在留資格変更許可申請をする前に、特定技能中の労働条件や活動内容・保証金徴収の有無やその他手続き等について、対面・テレビ電話等で説明すること。

出入国する際の送迎

海外から来日する特定技能に対しては空港からの送迎、国内にいて引越しが必要な場合には事業所または住居への送迎をすること。また、帰国時にも空港までの送迎をすること。

住居の確保と生活インフラの整備

特定技能の為の社宅の確保や賃貸住宅を契約する場合は連帯保証人になる等の支援をすること。銀行の口座開設、ガス・水道・電気の開通契約、携帯電話契約やその他契約等の補助をすること。

生活オリエンテーション

日本での生活を有意義に送れるように日本のルールやマナー、災害時の対応や公共交通機関の利用方法等を説明すること

公的手続き等への動向

転居・転出にともなう必要な市役所手続きや社会保障・税にかかわる手続きの補助・同行をすること。

日本語学習機会の提供

近くで開催されている日本語教室の情報の提供や日本語学習の為の情報提供をすること。

相談・苦情への対応

外国人が十分に理解することのできる言語にて、仕事場や日常生活で発生する相談・苦情等に必要な助言や指導を行うこと。

日本人との交流促進

地域のお祭りや行事を案内し、参加できるように補助すること。

転職支援 (解雇された特定技能に対して)

受け入れをしている企業の都合により、特定技能との雇用契約を解除する場合に転職先を探す手助けや推薦状の作成、仕事を探すための有給休暇の付与や必要な行政手続き情報を提供すること。

定期的な面談・行政機関への通報

支援責任者が特定技能及びその上司と最低3カ月に一度以上の面談を実施し、労働基準法違反等があれば通報すること

支援業務は内製化?それとも全部委託するのが良い?

紹介した特定技能に対する支援業務については受け入れる企業が自社で行う場合(1部の支援業務を委託することは可能)と全ての支援業務を登録支援機関へ委託する方法を選択できます。現在は多くの受け入れ企業が登録支援機関の助けを借りて、特定技能受け入れをしているケースがほとんどですが、内製化して自社で支援業務を行う企業も少しずつ増えています。特定技能は2019年4月に施行されたばかりで、その後はコロナウイルスの影響もあり、制度の運用が予定していたより大幅に遅れている為、制度自体の情報が少なく、運用方法についても不明点が多です。その為、自社で行おうとする企業が少ない状況が続いております。今からは特定技能の支援業務を委託する場合と自社で行う場合についてそれぞれのメリット・デメリットを説明して行きます。

登録支援機関に全てを委託する場合

登録支援機関は技能実習制度の監理団体が登録支援機関の許可を得ている場合やそのグループ会社が許可を得ている場合も多いです。

その他、行政書士事務所や個人で登録支援機関として支援業務を行っている場合もあります。何れのケースも今まで、技能実習生やその他の制度にて外国人材雇用についてのノウハウをもっている場合がほとんどであり、登録支援機関の登録申請の際にも外国人の受け入れ実績や相談事業の経験があるかについて確認をされます。

その為、登録支援機関に委託をすれば自社では申請に必要な資料(決算書や登記簿等)を支持された際に準備するぐらいで、面倒な支援業務を全て任せることができます。

メリット

外国人雇用のノウハウを既に持っており、入国管理局から許可も得ている登録支援機関に全ての支援業務を委託することで、自社で行う場合にかかる手間を無くすことができます。

監理団体が登録支援機関を兼ねている場合には、特定技能が実習生時から馴染みのある通訳者や担当者がそのまま支援業務を引き継ぐ場合も多い為、支援を受ける本人たちも安心できます。

デメリット

後述する初期費用や毎月の登録支援費用が発生します。また、全ての支援業務を登録支援機関の担当者が実施する為、企業の日本人従業員と特定技能との距離は縮まりにくくなります。

自社で行う場合

先に紹介をした1~10の必須支援業務についての多くは技能実習制度にて監理団体に任せていた業務が多いと思います。自社で1~10の支援業務を実施しようとした場合に実際に一番の課題となるのが、「7.外国人が十分に理解することのできる言語にて、仕事場や日常生活で発生する相談・苦情等に必要な助言や指導を行うこと」について、支援業務を実施する為の通訳者の手配ができるかどうかだと思います。

また、通訳者準備については「1.事前ガイダンス」や「4.生活オリエンテーション」でも必要となる為、避けては通れない点です。

それに加えて、技能実習制度では監理団体に任せていた省庁への申請書類についても自社で特定技能の受け入れをする場合は自社にて作成を行わなければなりません。

それらの点を踏まえて自社で支援業務を行う場合のメリット・デメリットを整理したいと思います。

メリット

最大のメリットはやはり、支援業務を委託した場合に発生する毎月の支援委託費を支払う必要が無いことです。支援委託費については委託をする登録支援機関にもよりピンきりですが、毎月2万~3万ぐらいの費用が1名ごとに発生するのが相場です。

それに加えて特定技能を最初に受け入れる際には初期費用として数十万円の費用が発生することは珍しくありません。その為、これら費用を支払う必要が無いのが最大のメリットと言えます。

デメリット

紹介した通り、支援業務は多岐にわたる為、これらを自社で行おうとする場合はそれなりの知識を持った人材や時にはマンパワーも必要となります。

基本的には社内の総務課の方が担当をすることになると思いますが、日々、制度が更新されているので日々の勉強も必要になる為、担当になった方の負担も大変大きいと思います。

まとめ

始まったばかりですが、今後は受け入れがますます加速して行く見込みの特定技能、受け入れ検討の際に一番の障壁となるのがやはり負担の大きい支援業務だと思います。今回紹介させて頂いたメリット・デメリットも踏まえて今後の特定技能受け入れの際に一度、登録支援機関の活用有無について社内で協議をして頂けたらと思います。

この記事を書いた人

ヤマシタハヤト

ユアブライト株式会社 海外人材担当 主にベトナムに関する情報を発信しております。

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