2019年より特定技能外国人の受け入れが始まり、2021年3月末時点では約22,000人以上の外国人が特定技能の在留資格で日本に滞在しています。

特定技能外国人を受け入れる際に必ず知っておかなければならないのが「生活オリエンテーション」。
今回は避けては通れない生活オリエンテーションについて解説をしていきます。

特定技能外国人受け入れ後に必須の生活オリエンテーションとは?

生活オリエンテーションは8時間以上の実施が義務付けられており、特定技能外国人を雇用した後に実施し、最初の定期報告の際には入国管理局へ実施した報告をする義務があります。生活オリエンテーションの最大の目的は日常生活や職業生活を問題なく送れるように特定技能外国人がまだ就労を開始したばかりの段階で事前に関係法令や日本で生活を送る上でのルールを説明しておくことで、在留中のトラブル発生を未然に防ぐことです。

生活オリエンテーションはいつ・誰が実施するもの?

生活オリエンテーションとは特定技能外国人の雇用を開始した後に実施が義務化されており、特定技能外国人に対して実施します。

特定技能外国人の受け入れ企業が実施をしますが、受け入れ企業に実施をする体制がない場合は登録支援機関にその実施を委託することができますが、登録支援機関に委託した場合は、その登録支援機関は生活オリエンテーションに限らず、特定技能外国人受け入れに際しての全ての履行必須支援をする義務が発生します。

受け入れ企業が実施をする場合は生活オリエンテーションの中の自社にて実施ができない項目はその実施を委託して、自社にて実施可能な項目のみの実施をすることになります。

生活オリエンテーションの実施は8時間と長時間のため、数日に分けて実施を行う場合もあります。
また、既に実施をしている事前ガイダンスと重複する内容もありますが、特定技能が開始されてから改めて確認の意味も込めて説明してください。

生活オリエンテーションで網羅する必要のある内容について

  • 日本での生活一般に関する事項についての説明

こちらは技能実習生から特定技能となる外国人にとって、すでに知っている事項も多いと思われますが、確認も兼ねての実施となります。
基本的には技能実習生の時に実施した入国後講習で実施している、「法的保護講習」や「市役所の講師の方が実施するゴミ出しについての説明」等が当てはまります。

  • 出入国管理及び難民認定法第19条の16その他の法令の規定により履行しなければならない又は 履行すべき国又は地方公共団体の機関に対する届出その他の手続に関する事項の説明

住所を変更する場合は市役所にて転居・転出、転入の手続きが必要なことや、国民皆保険制度の説明、住民税については住む場所で金額が変わり、実習生の時には所得税・住民税の免税措置を受けていた場合も、特定技能となった後はその措置が受けられなくなること等について説明する必要があります。特に、租税条約による免税措置については早い段階で説明をしておかなければ後々のトラブルにつながる為、必ず説明をしてください。

  • 特定技能外国人が把握する必要のある、受け入れ企業または委託を受けた登録支援機関が用意する特定技能外国人が日常生活やトラブル発生時に相談ができる連絡先及びこれらの相談又は苦情の申出をすべき国又は地方公共団体の機関の連絡先情報の提供

特定技能外国人の支援を行う支援担当者の連絡先や母国語で相談できる相談員の連絡先、連絡方法等や連絡を取ることのできる日時について確認が必要です。
また、どうしても相談しにくい事項については、直接国の機関へ相談ができるように国が設置している外国語での相談窓口、最寄りの市役所の多言語相談窓口等の情報についても話しておく必要があります。

  • 特定技能外国人が十分に理解することができる言語により医療を受けることができる医療機関に関する事項の説明
    特定技能外国人が日本で生活するにあたり、病気やケガをしたときは勿論のこと、歯医者等の情報についても提供をし、基本的には、特定技能外国人が住んでいる住居周辺の最寄りの医療機関情報を提供します。

また、加入する健康保険について、窓口負担額の説明、その他、必須ではありませんが、特定技能外国人が会社の健康保険以外に、複数の機関より販売されている特定技能外国人保険等に加入する場合は、その適用範囲等についても説明をします。

  • 防災及び防犯に関する事項並びに急病その他の緊急時における対応に必要な事項の説明

火災や地震、その他災害時に身を守るための情報や日本で多い犯罪の情報等を説明します。不測の事態にすぐに関係機関へ連絡がとれるように、救急車や警察の電話番号、その地域の過去に起きた災害の情報について説明し、迅速に対応できるように教えてあげてください。

また、特定技能外国人の母国では地震が無いまたは少ない国も多い為、小さな地震でも驚いてしまう場合すらあります。大きな地震に直面した場合でも冷静に対応できるように事前に最寄りの避難場所情報や身を守る方法について説明します。

防災とは直接関係ありませんが、特定技能外国人の母国では日本より喫煙率が高い国が多いため、喫煙をする外国人も多いです。喫煙の際のルールや喫煙をする場所等についてもしっかりと説明をしておくことが今後のトラブルを無くすためにも必要です。

  • 出入国又は労働に関する法令の規定に違反していることを知ったときの対応方法その他私の法的保護に必要な事項についての説明

実習生時の法的保護講習の内容と重複する内容となりますが、残業代金の割り増し賃金についてや会社によっては適用をしている変形労働、有給休暇の制度等について説明をする必要があります。また会社がそれらの法律に違反した場合にはそのことを相談できる連絡先についても説明をします。

また、外国人にとって一番気を付けなければならない入管法令について、許可を得た職種でなければ就業できないことやオーバーステイのルールについて、しっかりと説明する必要があります。特に、日本で在留または働いている外国人は必ず在留カードを常に携帯する必要があり、在留カードのその外国人の在留資格が明記されており、与えられている在留資格以外の仕事をすることはできません。このことについて徹底して説明をし、オーバーステイになってしまう条件等(在留期限後であっても新たな在留資格更新・変更の手続き中は2カ月間は特例期間として日本に在留できる)について特定技能外国人と一緒に確認をします。

生活オリエンテーション実施の際の注意点

生活オリエンテーションは口頭にて説明をする場合や書名も使って実施する場合、ビデオを見せて実施する場合等があります。もし、ビデオを見せて実施する場合でも、特定技能外国人がビデオの内容について質問したいことがあるときにはすぐに説明できるような体制でビデオ視聴をする必要があります。

また、事前ガイダンスと違い8時間の時間を割く必要があるため、特定技能の手続きを始める前に、生活オリエンテーションにかかる時間や実施場所・日時について会社と相談しておくと良いです。

まとめ

特定技能外国人に対して実施が必須となっている生活オリエンテーションについて説明をしました。特定技能になる前の外国人の状況によっても日本の生活やルールに対する知識・経験は違います。例えば、技能実習生から特定技能になる場合は、母国で試験を受けて、初めて特定技能として来日する場合と比べ既に日本での経験がある為、生活オリエンテーションを実施せずともある程度のことは分かっていますが、再確認の意味も含めて適正に実施をしてください。全ての特定技能となった外国人が有意義に働けるように生活オリエンテーションは適正に実施をしましょう。

この記事を書いた人

ヤマシタハヤト

ユアブライト株式会社 海外人材担当 主にベトナムに関する情報を発信しております。

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