ベトナムは過去6~7%ほどのGDPの伸びを見せており、このコロナにおいても2.91%の成長率を見せるなど、東南アジアの中でも更に力強い成長を見せています。ユニクロなども進出し、中国の次の市場として熱い期待をもたれています。ですが、日本ではまだ知名度が低く、真剣に進出を考えている企業はまだ多くありません。

今回、ベトナム進出を検討している感度の高い方、またすでに進出しているがもっと伸ばしていきたい方に向けてベトナムのマーケティング手法について説明します。

インターネットマーケティング一択の現状

まず、資生堂などの大企業を除き、ベトナムにおけるマーケティングとして一番に検討しなければいけないのはインターネット(とくにSNS)となります。とりわけこのコロナ後の状況において、インターネットマーケティングの重要性が増しております。ベトナムでもロックダウンが起きた関係で、ネットへの注力が加速しました。

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HootSuiteのデータによると、70%以上のユーザーがインターネットを持っております。また、YoutubeやFacebookなどの動画メディアにおいて、(違法・合法含めて)ベトナム語の字幕がついた映画、動画が多数アップされており、テレビなどの媒体よりインターネットのほうが強いです。

これから進出する企業においては特に、広告費の計測がしやすく自社である程度完結できるネットマーケティングから始めることを強く推奨します。

コロナにおいて伸びるECサイト

2020年においてコロナショックが起き、ベトナムでもロックダウンが発生した関係もあり急速なEC化が進みました。それに伴いECモールが大きく伸びています。ベトナムではAmazonなどのグローバルプレイヤーの存在感は大きくなく、地場のECモールが大きな存在感を示しています。特に大きいのが、「Shopee」と「Lazada」です。

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LazadaはバックにアリババがついているECサイトプラットフォームで、Shopeeは華人が立ち上げた本社シンガポールのECプラットフォームです。とくにShopeeの親会社「Sea」は、東南アジアにおけるGrab,Go-Jekとともに、東南アジアにおけるBATと呼ばれています。

このShopeeの特徴的なのは、欧米式の単一アプリモデルではなく、中国式の「スーパーアプリ」モデルを利用して成功しているということです。アプリ市場の未成熟なベトナムでは様々な領域を開拓できる余地があり、大手企業が様々なアプリを埋めてきています。

この両モールとも共通なのですが、値段が安い商品やセールの商品の流通量が圧倒的に多いです。例えば女性用のトップスなどでは値段が1000ドル以下の商品が67%の流通量となっており、日本製をこのモールで売るのは不可能ではないですが、これだけでは難しいと思います。中国製の商品なども多数出品されており、そちらのほうがどうしても値段が安いので、日本製のものは値段以外の訴求をする必要があります。

偽物が多いベトナムと、信頼される日本製商品

ベトナム人の方にヒアリングすると、皆さん口をそろえて「偽物が怖い」といいます。現在、ベトナムでは主に中国製の粗悪品・偽物が出回っています。特に、商品単価1000ドル未満のものは、ブランドの名前が冠されていても偽物という事例が多いため、特にベトナム人は高額のものを買うときに偽物かどうかを警戒します。そのため、販売者の信頼性はものすごく重要です。

それに伴い、日本製のものは信頼性が高いです。とりわけ化粧品やベビー用品などは日本からの輸出がものすごく活況な分野となっております。日本製のものは品質が高く、偽物も少ないと思われているため、日本企業は非常に有利な立ち位置にあるのです。

この記事を書くに先立って、ベトナム人がECで物を買うときにどのような点を注意するかをアンケートをとってみましたところ、主にこのような点を重要視します。

・ほかのショップと比べて価格が安すぎないかどうか
・ショップのレビュー
・Facebookページのフォロワー数
・販売投稿の動画(販売者の顔が見えるかどうか。また有名かどうか)

逆に言うと、これらを押さえてお店のページ設計をすることが重要です。これは日本のECサイト運営においても同様かと思いますが、やはり時間をかけてブランディング化していくことが重要です。

ベトナムはGoogleよりFacebook

ここは日本とは大きく違うところなのですが、ベトナムではあまり調べものをするときにあまりGoogleを使いません。何を使うかといえば圧倒的にFacebookであり、ベトナム人はFacebook中毒であると言えます。たとえば、2019年のデータですが、広告費のシェアはGoogleが27%であり、Facebookは42%です。27%もシェアがあるじゃないかと見えるかもしれませんが、Google広告にはYoutubeも含まれています。(Youtube動画はベトナムでは人気です)

それではベトナム人はどうやって調べものをするのかというと、例えばFacebook上で検索をしたり、Facebookのグループで質問をしたりします。Facebookグループは日本では考えられないほど発達していて、化粧品からビジネスや不動産まで、すべてFacebookグループで質問します。

たとえば、このFacebookグループですが、実に様々な相談や商品紹介がごった煮になっています。たとえば写真でもあるように、家を紹介したり、iPadを販売したり、日本製の商品を販売したりもしています。この時、購入希望者は販売者まで直接Facebookメッセージをして、購入までに様々な質問をいたりやり取りをします。

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Facebookグループでの商品拡散がオススメ

このFacebookグループにおける拡散は私もよく利用しています。自分たちの商品に関するFacebookページをつくり、その商品投稿をFacebookグループでシェアするのです。その時に商品価格や商品情報、きれいな写真をしっかりと書くのがポイントです。いわば商品投稿自体がLPの一種だと思い、すべての情報を載せるのです。そうすれば興味を持ってくれた人がFacebookにメッセージをくれます。一度メッセージを受け取るとこちらからもメッセージのやり取りができるので、たとえその場で購入まで決定しなくても後ほどキャンペーンの案内などが可能です。

Facebook広告は早くブランドを立ち上げるため重要

Facebookグループに投稿していくやり方は費用がかからなくてよいのですが、問い合わせを獲得するまで地道な作業が必要です。一気に大きく商品のリーチを広げたいときは、Facebook広告を活用しましょう。この時、予算ですが最初は1日2000円以上から始めるのがオススメです。また、このときFacebookページを育てるために、フォロワー獲得広告を打ちましょう。まずはFacebookページの認知度をあげるために広告を使い、フォロワー数を獲得するのです。というのも、ベトナム人は企業の信頼度を図るときにFacebookフォロワー数を非常に重要視するからです。また、Facebook広告からWebに誘導すると大体のパターンにおいてコンバージョン率が下がります。ですので、日本のようにただFacebookに広告をだしてWebサイトに誘導するのではなく、Facebookページ自体の広告を出し、フォロワー数をアップさせましょう。大体フォロワー数10000以上あれば、かなりの信頼度を獲得することができます。

また、フォロワー数が10000以上になると、ショップの投稿を出した時に安定して1000以上のリーチを獲得できるため、キャンペーンの案内などもやりやすいです。日本ではEメールを利用したリード育成がメインかと思いますが、それと同じ考えをFacebookにて適用し、Facebook投稿を利用してリード育成するのです。商品情報や利用者の声など、またほかにも有益な写真・動画をアップすればベトナムにおけるブランディングを安い費用で行っていくことが可能です。

私が実際に行っている施策であり、進出企業にも真っ先にオススメするのは、Facebookページを立ち上げて運用する体制を作ることです。これは日本に居ながらでもできるので、まず真っ先に検討しましょう。

日本以上に全世代に浸透しているTiktok

ベトナムにおいてマーケティング・商品展開していくなかで、私がFacebook以上に注目しているのはTiktokです。日本とは違いベトナムではすでに社会インフラに近い位置にまでTiktokが浸透しています。日本ではTiktokは若者が使うアプリという印象ですが、ベトナムではすでに教育動画なども多数あがっており、語学からビジネスまでTiktokを利用して勉強しています。

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たとえば、上の方はベトナムでは有名なビジネス・マーケティングインフルエンサーで、Tiktokを利用してマーケティングについて教えています。ちょうど、上記の動画ではエルメスがどのようにして成長したのかを語っており、それが80000いいねを超えています。(再生数はおそらく80万くらいかと思います)

また、Tiktokを利用して販売することも活況です。まだTiktokにはEC機能はないですが、Facebookとの連携やTiktok-DMを利用して販売を進めている方多数います。

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上の動画では化粧品を紹介しています。このような動画が多数人気がでており、Tiktokにて商品検索をする流れも活発です。

また、Tiktokは去年から広告機能を強化しており、1日2000円から広告出稿することが可能です。わたしもTiktok広告を出稿しておりますが、Facebookよりも広告の費用対効果がよく、非常にオススメできるものとなっています。Tiktokでは国単位・言語単位での指定もできるうえ、年齢や性別・趣味興味などによって広告出稿の出し分けもすることが可能です。日本企業や他の中国企業などもまだあまりTiktokには進出していないため、出来る方は今のうちに広告を出稿することをお勧めします。

Tiktokに出稿するにあたり、動画を作らなければいけないということに敷居を感じているかたもいらっしゃると思いますが、Tiktok動画は制作会社に頼む必要はありません。それよりも、動画自体のクオリティは低くてもたくさん出すことが大事となっております。私たちも、いつもiPhoneを利用して動画を自分たちでとってアップロードしていますが、それでも10万フォロワーを獲得するまで至っております。まずは始めることが大事です。

ライブ動画配信およびライブ商品販売の発達

ベトナムでは、いまライブ動画配信が流行しており、またライブ動画にて商品を販売する流れが加速しています。じつは、Facebookの販売投稿を見ても体感で3分の1以上がライブ動画による販売です。

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こういったライブ動画における販売のメリットは、販売者と直接コミュニケーションをとることが可能なことです。商品を気になった人は気軽にコメントすることが出来、また販売者はコメントを見ながら商品説明や質問対応がしてくれます。これが消費者の安心感につながり、購入に結び付くのです。中国では開始から1時間で売り上げ約78億円を達成したライブ動画販売がニュースになり、日本でも話題になるほどの普及率を誇っていますが、ベトナムにおいても重要です。もしライブ動画が可能な体制があれば、絶対にやるべきです。

実際にライブ動画をやると、知名度のないショップでも同時接続数100を超えることが多く、広告をかけないマーケティングにおいては最高峰の地位を占めています。Facebookもライブ動画を後押ししていて、ライブ動画をやると上位に表示されやすくなります。またTiktokにおいてもライブ動画を行うと上位に来やすく、Tiktokerの間でもライブ動画はマストツールとなっています。

ただ、スタッフによってはライブ動画を嫌がる方もいますため、できればベトナム人スタッフの採用時にライブに出演することがOKかどうか聞いておくと良いでしょう。ライブ動画が出来るかどうかは商品マーケティングにおいて大きな差となります。ライブ動画はベトナム人スタッフでないとできないため、採用時から計画を立てておくことが重要です。

地場SNS、Zaloは難易度が高め

もう一つ、ベトナム人に浸透しているSNSにZaloというものがあります。

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これは他の有名SNSと違い、完全にベトナムだけで運営されています。イメージとしてはLINEに近くSNSというよりはコミュニケーションツールの側面が強いです。実際の使い方としても、家族や親密な人と連絡するときにZaloをつかうといった使い方が多いです。

ですが、企業サイドの視点から見るとZaloはオススメしません。

・広告出稿画面がベトナム語メインなので使いづらい
・Facebookより費用対効果が良くない
・広告出稿までにベトナムの証明書が必要

以上のように、労力が多い割にはFacebookを超える効果を出すことが難しいです。Facebookをとりつくした後のマーケティングプランとしては良いですが、最初にこちらに手を出すのはやめましょう。

補足:そのほかのSNSについて

ベトナムは現在IT立国を目指している関係で、ベトナム独自のSNS・Webサービスが次々と出ております。ベトナム政府が国産SNSの開発を後押ししている関係もあり、特に2019年に入ってから多数のSNSが出ております。

例えば、日本でもニュースになっているものにGAPOというものがあります。これはベトナム企業が開発しているSNSで、ちょうどFacebookのクローンにTiktokを組み合わせたUIとなっており、発表によるとユーザーが600万人を超えたようです。

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ただ、私がログインして少し触ってみましたが、ユーザー数は確かに多いのですがアクティブユーザーが少なく、グループもあまり活性化していない印象です。おそらく、ユーザー獲得に注力しすぎて内部の活性化までしていないのだと思います。

他にもたくさんのSNSがしのぎを削っている状況ですが、今のところはFacebookやTiktokより注目するものはないです。ですが、今後政治・経済情勢などによりこれらのクローンが大きく伸びる可能性もあります。たとえばインドのようにTiktokが禁止になるような事態が起きればこれらに流入する可能性があります。

商品販売に現地法人設立は必要か

私が相談を受ける中でよく聞かれるのが、現地展開にあたってベトナムにオフィスを作ったり、現地法人を作ることが必要かということです。

 結論から言うと、中小企業で予算がなく、オンラインで商品を売るだけであれば、現地法人や現地オフィスを最初から作る必要はありません。ベトナムにおける輸出入や法制度調査、進出支援などの会社はたくさんあるため、現地企業をパートナーとすることで対応可能だからです。

というのもベトナムに法人をつくるのはかなり大変なのです。シンガポールなどはネットだけで簡単につくれますが、残念ながらベトナムは法人設立や法制度などは日本以上に複雑かつ進みが遅いです。また、外資規制などもあり、法制度の調査にも時間がかかります。オフィスを作るのであればその運営費用や、現地スタッフなどの費用もかかります。数百万円かかることも珍しくないです。税務面などにおいても移転価格税制などが加わるため、よくよく注意することが必要なので、例えば日本の商品のベトナムにおける販売であれば現地会社と提携するほうが早いです。

ただ、ベトナムの会社を頼るのであれば、そのパートナー企業に信頼がおけることが絶対条件です。そのためにも、決裁権のある方がベトナムに出張し、パートナーと商談したり訪問することは大事です。(コロナなので出張が非常に難しくなってしまいましたが・・)
また、日本にいるベトナム人に現地パートナーの調査をお願いするのも有効でしょう。当然ながらベトナム人が調査すると、日本人がわからないこともたくさん分かるため、信頼度調査には非常に有効です。日本には現在ベトナム人がたくさんいるので、雇用したりバイトや業務委託などで調査依頼を検討しましょう。JETROなどを活用するのもオススメです。

  もちろん、本格的に展開をするのであればオフィスや法人は信頼性や法制度、オフライン展開などにおいて絶対的に有利です。予算が用意できるのであれば現地法人展開をお勧めします。

在日ベトナム人を活用しよう

今、日本にはたくさんの留学生がいますが、その中でもベトナムの留学生は中国の次に多いです。こういった留学生の方は個人で販売した経験がある人も多く、販売に関する勘所をよくつかんでいます。

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いまはコロナ禍なので留学生の方が就職先に困っている事例も多く、また本国に帰る事例も多いです。日本語力を活かして販売の仕事をお願いすれば、良い戦力になってくれるでしょう。

実際、私も彼ら彼女らの発想に気づかされることが多いです。日本とは違った文化などを理解することがベトナムにおける進出を成功させる大きな一歩となるでしょう。

まとめ

ベトナムは一昔前の中国のような熱気を感じる面白い市場です。現在、日本の技能実習生や留学生などの帰国者も多く、日本が大好きな人が多いです。この記事を見てベトナム進出を考えてくれる人が一人でも増えてくれることを祈っています。

この記事を書いた人

ヤマシタハヤト

ユアブライト株式会社 海外人材担当 主にベトナムに関する情報を発信しております。

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