ビザ・在留資格
「3号技能実習」それとも「特定技能」?それぞれのメリット・デメリットを解説します。
現在、多くの企業が受け入れをしている外国人技能実習生、日本の技術を学んで母国に持ち帰ってもらい、母国の経済発展に貢献してもらおうという制度趣旨のもと運用されております。また、受け入れ企業では技能実習生は無くてはならない存在となっており、真面目で基本的に3年間以上働いてくれる人材としても重宝されています。そんな技能実習制度は現在、一定の条件を満たせば3号技能実習という選択肢が生まれ、最長5年まで技能実習生として日本に在留する事ができるようになりました。また、2019年4月よりは新しい在留資格である特定技能が発足し、2号技能実習を満了(3年間の技能実習を満了)した外国人については、それだけで特定技能の在留資格申請ができます。そのような状況下で現在では2号技能実習を修了した後の選択肢は主に3号技能実習又は特定技能という2つの選択肢ができました。今回は2号技能実習を修了する外国人のその後の選択肢について悩まれている受け入れ企業に向けて、「3号技能実習」・「特定技能」それぞれのメリット・デメリットを紹介します。
3号技能実習とは
3号の技能実習とは現在の技能実習生制度(2017年11月施工)で新設された技能実習2号の次の段階の技能実習です。期間は2年間で、技能実習生2号の間に必須の専門級の実技試験に合格することが3号に申請する外国人の条件で、受け入れ企業も外国人技能実習機構より、優良企業認定を受けていなければたとえ外国人が3号技能実習生になる資格を持っていたとしても受け入れをすることはできません。
特定技能とは
2019年4月に始まった新しい在留資格で創設された目的は日本の人手不足解消です。2021年3月末時点で約22,000人以上の外国人が特定技能の在留資格で日本に滞在していますが、そのほとんどが技能実習2号または3号を修了した後に特定技能の在留資格を取得した外国人です。特定技能として外国人が日本で就労するには受け入れ企業と外国人それぞれが許可を貰う必要があり、受け入れ企業は特定技能の協議会へ加入、外国人は入国管理局より特定技能の在留資格の許可を受ける必要があります。協議会への加入方法については特定技能の14分野それぞれでルールがあるため、特定技能外国人を受け入れる予定のある企業は協議会へ入れるか否かについて事前に確認しておくことをおすすめします。
3号技能実習へ移行するメリット・デメリット
メリット
3号技能実習へ移行するメリットは特定技能の外国人と比べ、賃金を安く抑えることができる場合が多いことです。厳密には3号が特定技能より賃金を安くしていいというようなルールはありませんが、特定技能の方が賃金や手当に関しての審査は厳しいです。
また、タイや中国の実習生であれば技能実習生の間は所得税・住民税が免税となりますが、特定技能になるとその免税措置がなくなるため、税金を払わなければならなくなります。
3号技能実習生へは入国・帰国の渡航費を実質、企業が負担する必要があるため、3号技能実習生へ移行するのは受け入れ企業よりも、外国人自身の教授するメリットが大きいといえます。
デメリット
3号技能実習へ移行するためには通常技能実習2号の間に受験する3級または専門級の技能試験に合格する必要があります。3級または専門級の試験は実技と学科がありますが、3号へ移行するためには実技試験のみ合格していればその資格が与えられます。しかしながら、現在では2号の技能実習中に受験が義務化された3級または専門級の試験ですが、現在の技能実習を管轄する機関である外国人技能実習機構ができる前までは専門級の受験が必須ではなかったため、受験している実習生はほとんどいません。そのため、昔、実習を行っていた外国人を3号技能実習生として日本に呼び戻すためにはその外国人が一旦、3級または専門級の試験受験のために日本にきて、合格した後でなければ3号技能実習の手続きすら始めることができません。
また、3号技能実習生を受け入れするためには、まず受け入れ企業が優良企業として認定されている必要があります。優良企業として認定されるためには優良要件適合申告書という書面(優良企業となるための項目が記載されており、それぞれの項目を満たした場合の点数も割り振られている)で6割以上の点数を満たさなければなりません。その中でも最も加点が高い項目が、受け入れている技能実習生の試験の合格率でこの合格率の中には1号技能実習の間に受験する基礎級、2号技能実習の間に受験する3級または専門級、3号技能実習の間に受験する2級または上級の試験の合格率が含まれます。3号の技能実習生が受験をする2級または上級の試験ですが、職種や作業によっては非常に難易度が高い場合も多く、合格はほぼ不可能と言われている試験さえあります。もし、3号技能実習生の受け入れをして、その実習生が2級または上級の試験に落ち続けてしまうと、優良企業の要件を満たさなくなる場合もあるのでその点もデメリットと言えます。
特定技能へ移行するメリット・デメリット
メリット
特定技能の在留期間は最長5年間で技能実習3号より長い期間、日本で就労することができます。また、技能実習は技能実習計画に沿って行う必要があり、計画の履行状況を技能実習日誌に記録していくことや、技能実習1号、2号、3号それぞれで技能検定試験などもありますが、特定技能に関してはそれらがないため、技能実習と比べ手間がかかりません。また、負担する費用面でみても、技能実習生の場合は入国・帰国の際の航空券代金や技能検定試験などの受験費用、入国後の日本語勉強をする際の費用やその間の生活費などを負担しなければなりませんが、特定技能に関してはそれらがなく、航空券代金に関しても特定技能の負担で良いとなっています。特定技能外国人への賃金や手当などの待遇面では技能実習の場合と比べて高く設定しなければならない場合もありますが、受け入れのためにかかる費用などを考えると、受け入れ期間にもよりますが、費用が技能実習生より抑えられる場合もあります。
デメリット
特定技能外国人を受け入れる為には企業が特定技能協議会へ加入する必要があります。協議会は特定技能の14分野がそれぞれ別々のルールで加入資格を設定しており、分野によっては加入手続きが分かりにくい場合や難しい場合があります。たとえば、製造業分野では特定技能外国人が特定技能の在留資格を申請する前に協議会へ加入することが義務となっております。そのため、協議会への加入(約2カ月)+在留資格申請(約2カ月)の計4カ月ほどの期間が最低でもかかってしまうことになります。また、特定技能は2019年4月に始まったばかりの制度のため、法律が変わることや、受け入れる特定技能外国人の国によって特別なルールが新たに設定されることも良くあるため、その動向を逐一チェックしておく必要があります。
まとめ
今回は3号技能実習と特定技能のメリット・デメリットについてそれぞれ紹介をしました。受け入れ企業にもよりますが、それぞれメリット・デメリットを考えて、どちらの制度で外国人の受け入れをするかを考え頂きたいです。また、とにかく今いる2号技能実習生を長く会社で就労させたいという場合には2号技能実習→3号技能実習→特定技能という選択肢もあるので一度検討してみてください。