海外文化・暮らし
ネパールの海外送金事情~ネパール経済を下支えする母国送金
移民や出稼ぎ労働者による海外送金は、母国の家計を築く重要な手段となっています。開発途上国ネパールでは海外送金による家計所得が、国内の経済成長に与える影響は大きく途上国の発展を下支えし、家計の安定はネパール世帯の生活水準向上に繋がっています。
ネパールの海外出稼ぎ労働者数と送金額
現在、ネパールから海外へのへ労働者数は 581 万人と言われています。
国別に見ますと、1位:マレーシア 167 万人/2位:カタール158万人/3位:116万人サウジアラビア/…9位:日本21万人…/
中東がおもな海外出稼ぎ先の国となっています。ネパールからの海外出稼ぎ労働者の数値は、2014年が最高527,814 人に達し、それ以後は減少ぎみとなっていますが、これに伴う海外からの送金額は、2018年よりほぼ横ばいで8750億ネパールルピー、国内総生産23.2%相当となっています。
(参考元:在ネパール日本国大使館によるデータ
https://www.np.emb-japan.go.jp/files/100138070.pdf)
海外送金と貧困からの脱却
ネパールへの海外送金額は、1世帯の収入の1/4と言われています。送金は各家庭の教育費・家計投資・医療費などの支出を増やし、生活水準の向上と貧困家庭から抜け出すための重要な役割となっています。
ネパールの貧困問題の要因である教育水準の低さは、海外送金によって改善され、低所得者世帯の子供たちの学習環境や学力向上にも反映しています。
送金によるの家計の潤いは、ここ数年続いているネパールの建築ラッシュからも伺えます。カトマンズ盆地内では新築や増築の現場が多く見られ、コロナ禍においても建設業は他の業界よりも稼働している傾向です。
ネパールの海外送金は、過去において何百万人もの貧困層の人々を救い、女性の社会進出にも大きな役割を果たし景気動向に大きく影響しています。
しかし、今回のコロナ流行によって再びネパール社会から貧困家庭を生み出すことが懸念され、送金を受け取ることができない家庭では、教育や健康に関わる費用を削減しなければならない状況下へと進んでいます。
海外送金が無ければ暮らしがなりたたないという現状が、ネパールから海外へ労働力を送り続けている要因のひとつでもあり、日本での労働を希望する特定技能や技能実習生が、こういった背景を持つ人材であることが大半です。
コロナ禍の海外送金減少の影響
コロナ禍において、海外出稼ぎ労働者の置かれていいる状況は厳しく、解雇による収入減少や仕送りが途絶えてしまうケースが見られます。
コロナ影響よる送金額は、2021年にはネパールで海外送金12%減少の数値が出され、ネパールの経済成長が一変する傾向にあると世界銀行は予測しています。
ネパールでは第二波のコロナ感染拡大により国内情勢はかなり不安定な状況であり、外出禁止令や国際線停止などの規制が強化される中、感染防止と経済成長の両立に苦戦している現状です。
海外送金の減少は、ネパールをはじめ途上国の経済を揺るがす大きな打撃となっています。世界中に猛威を振るっている新型コロナウィルスは、途上国と先進国の格差拡大を大きく示し、自国のみでは感染防止できない途上国の弱みは、ワクチン接種や所得、教育、医療に対する国の対応からはっきりと際立って見えてきます。
コロナ終息未定の今、ネパールでは、海外送金の減少と生活水準の低下から、コロナ感染防止のための経済封鎖は長期的には不可能な状況下にあります。
海外出稼ぎ労働者の役目は、海外送金という経済活動によって継続して安定した家計を築くことです。現在、ネパールから出国中の海外出稼ぎ労働者や、将来、海外への就労を目指すネパールの若者たちにとっては、状況の変化が著しい時期になっています。
あらためて考え方をシフトすることや、海外送金に依存した経済活動について見直すことなど、海外と母国の間で思考することは途方もなく沢山あります。
※日本の在留資格取得者→ 外国人:2,885,904人/ネパール人:95,367人
(参考元:法務省によるデータ・在留外国人数)