外国人の方を受け入れる上で一番注意しなければならないのは信仰されている宗教に対する配慮と他宗教の方への理解です。

例えば日本は多くの方が仏教であり生活するうえでそこまで仏教を気にしたりそれに左右されることは殆どないと思います。

しかし他宗教の中には食事の中で食べられないものであったり一か月の中で特別な日が合ったりします。

それらは自国で生活するうえで当たり前となっていますが、日本で生活する中では当たり前ではなく、うまく出来なかったり周りからの理解を得られないこともありますので

受け入れる施設側がサポートして行かなければなりません。

ここでは各宗教に関する豆知識と具体的に施設はどのような配慮をすればよいのかをご紹介いたします。

礼拝室の確保

イスラム教では一日に何度も礼拝を行う習慣があります。それらを怠ることはまずないですし礼拝の時間を設けなければなりません。

最近ではグローバル化が進んでいるため大学の校内や空港などにも礼拝室が設置されていたり会社にある場合もあるので現代社会においては特段珍しい物でもありません。

また礼拝室ではありますが、皆さんが想像しているような仰々しい物が必要ではなく

数人が座れる程度の部屋であれば構いませんし、礼拝に必要なものも特にないので

場所さえ確保していれば大丈夫かと思います。

インターネットで調べると男女別の入り口があったり洗面台を設置し手足を洗えるようにしているなど様々な礼拝室がありますが、そこまで用意する必要はありませんし過度な施設は日本人職員との亀裂を生みかねないので当たり障りのない範囲での設置が望ましいです。

各宗教の食事制限について

●イスラム教

豚肉とアルコール、豚肉と言っても豚肉を出さなければいいわけではなく豚肉を調理する際に用いた油などを使用しても豚肉のエキスが入っているため不可となります。

またアルコールはお酒だけでなく日本料理で良く出てくる日本酒やみりんなどもNGです。

●ヒンドゥー教

牛を聖なる物として大切に扱っているため決して食べません。またヒンドゥー教徒の中には殺生を避けるために菜食主義者もいるので注意が必要です。

●キリスト教

特別、食に関して制限があるわけではありませんがキリスト教の場合宗派が複数あり中には菜食を推奨している所もあります。

施設における食事について

食事制限がある場合施設ではどのような配慮をすればよいのでしょうか。

筆者の施設では社食という名目で利用者さんが食べられている食事を1食数百円で職員も食べることが出来ます。

かなり安く食べることが出来るので助かっているのですが、宗教による食事制限には対応していません。イスラム教の方が来られた際に検討したことがありますが、食事の主体はあくまでも利用者様であり職員は自分たちで好きなメニューを選ぶことは出来ません。

例え宗教による食事制限があっても利用者様は仏教であり食事制限は無いので、巻き込んではいけません。

そのためイスラム教の方には豚肉やアルコールが含まれているため提供できない旨を説明し自分たちで用意してもらっています。

各種イベント時の食事にも注意が必要です。

例えば外出や旅行が年に数回あります。日帰りから場合によっては泊まりの場合もありその間の食事は利用者さんと同じものを食べます。ホテルなどであれば宗教に対応した食事を提供してくれるところもありますが、難しい場合はイベント自体の参加を中止にすることも考えなければなりません。

筆者の場合、こんなことがありました。

バーベキューが出来る施設に外出した際、そこでは豚が名産であり豚肉が食べ放題だったのですがイスラム教の方が食べることが出来ないためその方様に施設が勝手に専用メニューを用意しました。

ただ豚肉以外は別途で追加料金が掛かるのですが、それを利用者が支払うことになっており日本人の職員から「なぜそこまで特別扱いするのか」「食べれないのであればそもそも行かなければ良いだけ」「利用者さんは食べないのになぜ負担しなければいけないのか」と利用者の保護者様を巻き込んだ大問題に発展したことがありました。

それ以降食事を提供するイベントには極力外国人の方の参加を控えるようになっています。

自国の料理が食べられるお店に行こう

各宗教に対して食事の配慮が様々必要ということは分かったかと思います。それは飲み会などの場でも同じで皆さんが気軽に言っているお店の中には完全にNGのお店もあるため日本料理ではなく外国人の方の郷土料理を食べられるお店に連れていくことがコミュニケーションを行う上で非常に助かるかと思います。

筆者もイスラム教の友人がいますが都会に行けばインド料理を作るうえで必要な材料や調味料が揃うが田舎では揃わないし、同郷の人と接する機会が無いと寂しい思いをされていた記憶があります。

そのためインド料理を出してくれるお店に連れて行ったりそこで働いているインドの方と交流してもらう事で充実した生活を送ってもらえるようになりました。

筆者の失敗談

筆者の施設ではインドネシアの方も受け入れていたのですが、ある日大きな失敗が起きてしまいました。

受け入れて数か月経過した時の事です。2名の方を受け入れたのですが両名が朝から元気がありません。利用者様の前では元気にふるまっていますが明らかに元気がなく落ち込んでいるのです。

事情を聴くも「大丈夫」と言われ何か日本人職員との間でトラブルでも起きたのではないかと思い探ってみると、日本人職員から気になることを言われました。

「お祈りの時間って決まってないの?」「一日一回くらい?」と聞かされました。

ただ私が把握しているのはお祈りは1日5回行います。お祈りの時間は夜の8時頃、早朝、正午過ぎ、午後3時頃、日没です。そのため不思議に思い一日彼女らの行動を見てみることにしました、するとお祈りの時間にお祈りをしておらず夕方の4時過ぎにのみ行っているだけでした。

これは変だと思い、お祈りについて聞いてみると彼女らの思いに愕然としました。

「早朝は朝ご飯の時間、正午過ぎは昼ごはんの時間、午後3時は入浴の時間で忙しく自分たちが抜けることで迷惑が掛かってしまう、皆さん仕事をされているのに申し訳がない」と言われ自分がいかに適当な仕事をしていたのかを思い知らされました。

受け入れる当初は礼拝室さえ作っていれば自分たちの好きな時に礼拝に行くだろうと安易に考えていたのですがそれが彼女らにとって負担となっていることに気付きました。

直ぐに全職員へお祈りの時間を周知するとともに彼女らが抜けても問題がない様にスケジュール調整を行いました。

彼女らが言い出しにくい時は日本人職員からお祈りに行かれるように声掛けしてもらう事で彼女らも安心してお祈りを出来るようになり元気な彼女らの姿をまたみることが出来るようになりました。

まとめ

外国人介護士を受け入れるにあたり各宗教について把握しておかなければ無用のトラブルを生みかねないことが分かったのではないでしょうか。

私たち日本人はそこまで宗教にとらわれる生活は送っていないため彼ら彼女らの戒律やルールに対し不思議に思ってしまいますが外国人の方にとってそれは当たり前の事なのです。

当たり前にしていた事が出来なくなるのはかなりつらいことだと思います。

きちんと各宗教についての理解を広げるとともに、何が必要なのか、何に困ることがあるのかを事前にしっかりと話し合いトラブルが起きないように努めなければなりません。

この記事を書いた人

Hikaru Miyauchi

介護一筋11年。 人の役に立ちたくてこの業界に入り、そこで得た経験知見を活かしてフリーランスライターとしても活動。 特別養護老人ホームにて3年正社員として勤務、その後同法人内のグループホームやデイサービス等に異動をし勤務。 7年前に介護福祉士を取得、業務として施設で外国人の方を介護士として3名受け入れを行う。 それ以降1年ごとに3名の方を受け入れ最大で9名の方を受け入れ。現在はミャンマーの方の受け入れに力を入れている。 現在の業務内容は総務部兼任で利用者に対する支援、人材育成担当、外国人介護士担当。

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