特定技能外国人を雇用する際は、外国人対象に生活オリエンテーションの実施が必要となります。生活オリエンテーションの項目には外国人が苦手とするゴミ出しルールの指導が含まれています。

日本のゴミ出しルールが母国のルールと異なることや習慣の違いで、外国人が居住する地域でのトラブルも発生しています。ゴミ出しルールについては外国人の意見は様々ですが、とにかく外国人に理解して実践してもらうためには、多角的なアプローチからの指導も必要となるでしょう。

その一環として、ゴミ出しルールをマニュアル的に指導する以外に、外国人がなぜ?ゴミ出しルールに従ってくれないか?理解を深めるためにもその理由や背景について知っておくと参考になるでしょう。

今回はネパール現地のゴミ処理事情についてご紹介いたします。ネパール人社員のガイダンスにお役立てください。

ネパールの廃棄物処理法

ネパールでは廃棄物処理法が制定され民間でゴミ処理事業が始まったのは、まだ数年ほど前からとなります。

廃棄物処理法に記載されている内容には、先進国と同様に細分化されたゴミ出しのルールが定められていますが、これらの法令に従って民間の廃棄物処理事業所が運用を行い、ゴミ出しルールが一般住民に浸透し実践できるようになるまでには、時間を要することと見込まれます。

ゴミ処理回収車が来る日

現在、ネパールの首都カトマンズでは、地域ごとに定められたゴミの収集日にゴミ処理回収車が巡回するようになっています。

収集日は週2回、地域ごとに定められた曜日と早朝の時間帯に各家庭の玄関前に置かれたゴミを回収します。ゴミを回収する作業員はホイッスルを鳴らしながら住宅街や繁華街を回り、回収の合図を送りながら作業を行います。

ゴミ回収の習慣がスタートしてからゴミ処理回収車のルーティンが定着するまでには、およそ3年ほどかかった記憶があります。以前は、回収作業員がいつ来るのか?いつ来たのか?がわからず、ゴミ出しの場所も一定していませんでした。

また当時は、ゴミ処理回収車に家庭ゴミを持って行ってもらうことは一部の住民に限られており、その他の住民は、家庭ごみを庭先で燃やしたり土に埋めたりしていました。

ゴミ分別のルール

廃棄物処理法に定められたネパールのゴミ分別のルールは、今のところ一般住民までには厳格に義務付けられていないため、ゴミは分別せずにすべて一緒に出して回収してもらうようになっています。

ゴミ出しルールがまったく無いので個々にゴミ出しの方法が異なり、散乱したゴミを回収する作業員の負担を減らすためにゴミは袋や箱などを使用して中身を閉じて出すように、ゴミ処理事業社からの告知のチラシが配られたこともあります。

細かいゴミの分別ルールも無いのにゴミの出し方に問題があるほど、ネパール人の中には常識が備わっていない人もいるので、細かい分別ルールを一般住民のすべてに浸透させるまでには、住民の意識が変わることが大きな課題です。

ゴミ処理料金

ゴミ処理回収の事業社は、月に1度各家庭を回ってゴミ処理回収の集金を行っています。料金は1ヶ月450ルピーで、集金ノートに月ごとに領収済みのサインをするようになっています。

1年に1回、10月のダサイン祭りの月だけは、ゴミ処理事業社の社員ボーナスとして割り増し料金を払うようになっています。

ゴミ処理回収車の巡回がスタートした頃は、料金を払ってゴミ処理をするというシステムにすぐ対応できない住民もいましたが、現在は自宅でゴミを燃やすことに警告が出ているため、だんだんシステムに順応する住民が増えて来ています。

ゴミのポイ捨てやゴミの山

ネパールの都市化とともに廃棄されるゴミの種類と量は増える一方、一般住民のゴミ処理に対する意識が追い付かず、あたり構わずポイ捨てする人が多く、空き地がゴミ捨て場となり衛生面での問題も出て来ています。

道端によく捨てられているゴミは、タバコの吸い殻、タバコ空き箱、飴やガム、スナック菓子の包み紙など、これらはポイ捨てするのが当たり前のような習慣があります。

ゴミをゴミ箱に捨てるという習慣がなく、公共のゴミ捨て場が圧倒的に少ないこともあり、公共の場所は益々ゴミで散らかるばかりです。

ネパール人にゴミ捨てルールを指導するためには、教育機関の指導法的な手段が必要となり長期戦となりそうです。

ネパール人は再利用が得意

ネパール人がゴミ捨て能力に欠けている部分は、これからの課題となりますが、一方では、ネパール人は身の回りにある物はできるだけ長く愛用し、再利用できる物は使いまわすという習慣を持っています。

例えば瓶詰のビンやプラスチックの空き容器、スナック菓子の袋、子供の使用済みノート、新聞紙、ペンキの空き容器、ペットボトルなど、使い終わったあとに再利用できるものは簡単に捨てず、新しい活用方法で使うことが一般常識です。

再利用リサイクルがネパール人にとっては特別なことではなく、今まで使用していた物を簡単に捨てるということがなく、ゴミを捨てるという行為に習慣性がないという一面があります。

ネパールには、ゴミ処理事業社とは別に、家庭で不要となった物をお金と交換して持っていってくれるカバリというリサイクル回収業があります。家庭で不要となった物や、鉄くず、プラスチックやゴム製のものなどを回収してくれます。

ネパール人がゴミ処理回収車に出すゴミの中に、粗大ゴミがあまり見られない理由のひとつは、カバリに出したり使わなくなった物は捨てずに他の人に譲ったり売ったりするためだったりします。

まとめ

日本のゴミ出しルールは、異なった習慣や文化を持った外国人には厳しいルールという印象があるようです。

外国人が日本のゴミ出しルールに真面目に向き合ってくれるためにも、出し方のマニュアルを指導する前に、ゴミ処理についての考え方や意識を少しづつ解してあげることや、それぞれの国のゴミ出しルールについて知っておくことも必要となるでしょう。

この記事を書いた人

shyu

海外在住ライター/ネパール国籍の配偶者と日本国籍の息子と日本人の私の3人家族。カトマンズに12年暮らす。 海外に住むということは、国籍はもちろん生まれも育ちも違う者どうしが、なんらかの関係性を保ちながら生きる修行をしているようなもの。 今後、日本で暮らし働く外国人が増えて行くことが予想される中、その動向を外国人の心情に寄り添った視点で発信していきたい。

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